イラスト付きコラムを書こう(描こう)と思い立ち、声高らかにSNSで表明したものの、結局はイラストを描く機材が使いこなせずに以前描いたクッキーの落書きを使いまわし、適当に色を塗り直す程度に落ち着いてしまった。
その実、このいびつなクッキーが醸し出す庶民感が、私は好きだ。
典型的なアメリカのチョコチップクッキーをモデルに描いてみたが、きっと日本では「某カントリーマアム的な?」という解釈がされるだろう。それは間違いではないんだけれど、正解でもない。
じゃあアメリカのクッキーって何なのさ?
と思うかもしれない。
これには「クッキーはアメリカンカルチャーの基礎だよ」としか答えようがない。
ところで、冒頭の画像にある「American Culture 101」(あめりかん・かるちゃー・わんおーわん)は「アメリカ文化の基礎学」という意味になる。
どういう事かというと、アメリカの大学で教えられている入門クラスには全て「101」が付いているのだ。(Art Histroy 101, Algebra 101 という具合に)
チョコチップクッキーはまさに、American Culture 101 なのだ。
ソウルフードと言っても過言ではないかも知れない。
そして驚くべき事に、アメリカ人はクッキー生地を生で食べる。それはもう、美味しそうに。
ボウルに入ったままスプーンで(あるいは手づかみで)、焼く前のクッキーをパクパクと平らげる。
生のクッキーを食べる為にクッキーを焼く、という、もはや奇行とも言える名言(迷言)を残した私の友人もいる。
また、別の友人は妊娠中にどうしても生のクッキー生地が食べたくなったそうなのだが、なにせに妊娠中は生卵の摂取が禁止されている。
そこで彼女はネットで「妊婦も食べれる生クッキー生地」なる物を取り寄せたのだ。
そこまでさせるクッキー生地の魔力たるや、末恐ろしい。
こんな話を私が音声配信にて話すと、聞いて下さっていた方々が次々と「生クッキー生地専門店」の存在を話し出すではないか。
後日写真つきでレポートされた「生クッキー生地専門店」は、まるでサーティーワンアイスクリームの様。ショーケースの向こう側に色とりどりな数十種類の生クッキー生地が並んでいる。
コーンにしますか?カップにしますか?トッピングもお好きにどうぞ、と言う具合だ。
我が家でクッキーを焼くときは、もちろんアメリカ人の夫の為に生の生地を1/3程残しておく。
それをペロリと平らげる夫の笑顔を見ると、生クッキー生地を試食した時に感じる砂糖のジャリジャリや、バターのねっとりとした油臭さなど、どうでもよくなるのだった。